【オヌル・アタオールに聞く(4)】 トルコ人必読の日本指南書『ジャポン・ヤプムシュ』の著者が語る、日本とトルコの「食」比較

これを読まずしてトルコで「日本」は語れない、名作『ジャポン・ヤプムシュ』シリーズの著者オヌル・アタオールさんが、日本とトルコの「食」について語った。

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【オヌル・アタオールに聞く(4)】 トルコ人必読の日本指南書『ジャポン・ヤプムシュ』の著者が語る、日本とトルコの「食」比較

 

 

 

オヌル・アタオールさんは、経済参事官として駐日トルコ大使館に勤めた数年間の日本(にほん)での滞在経験を『ジャポン・ヤプムシュ』シリーズ三部作にまとめ、2010年から2013年にかけて出版した。

 

ユーモアと日本に対する真摯な態度が絶妙に混じり合った甘辛風の『ジャポン・ヤプムシュ』シリーズ三部作は、瞬く間に評判を呼び、ベストセラーとなった。オヌル・アタオールさんは、当時あまり高いとは言えなかった日本への関心を集めるきっかけを作り、遥か遠い国日本に一歩足を踏み出す勇気を与えた。

 

 

『ジャポン・ヤプムシュ』シリーズ三部作は、日本に興味を持ったトルコ人がまず手にすべき「日本の指南書」として、現在も多くのトルコ人に愛読されている。

 

 

 

 

オヌル・アタオールさんの厚意により2015年の年末に、オヌル・アタオールさんを囲んで座談会が実現した。ファンを代表して、エブル・オクヤルさん、ビリゲ・ボスタンさん、メルベ・アクスさんがインタビューをした。

 

 

【オヌル・アタオールに聞く(1)】 トルコ人必読の日本指南書『ジャポン・ヤプムシュ』誕生秘話

 

【オヌル・アタオールに聞く(2)】 トルコ人必読の日本指南書『ジャポン・ヤプムシュ』の著者は最初から日本へ行きたかったのか

 

【オヌル・アタオールに聞く(3)】 トルコ人必読の日本指南書『ジャポン・ヤプムシュ』の著者が語る日本での生活

 

 

その座談会を何回かに分けてお届けする「オヌル・アタオールに聞く」シリーズは、今回が最終回。シリーズを締めくくる4回目のテーマは、人類最大の関心事のひとつであり、幸せと楽しみの源、「食」。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

メルべさん

日本の料理はトルコの文化に合わない・・・というよりは料理の味が違いますが、このことについて、どう思いましたか。トルコで最後に何を食べましたか。日本に行ったらもう見つけることはできない、この味が懐かしくなるだろうと思った料理はありましたか。

 

 

オヌルさん

トルコを離れる前に、友人たちが送別会をしてくれました。どこに行きたいかと聞かれて、「魚料理の店がいい」と答えました。まさに魚と海産物の中心地に行こうというときに、少し変な希望ではあったのですが、頭の中にはある恐怖があったのです。「これからは生魚ばかり食べることになるのだろうか。調理された魚を見つけることができるのだろうか」と考えていました。というのも、その前に3週間日本に行ったときは、日本を全く知らなかったからです。もっと言えば、ずっと1人だったので、日本料理を試す機会もあまりありませんでした。ピザ屋やハンバーガー屋を見かけたら、そこで食べていました。自分の口により合う天ぷらを発見したりもしましたね。

なので、日本に行く前に調理された魚介類を食べ納めしておこうと考えたのです。それで、友人たちと一緒に昔ながらの魚料理の店に行って、調理された魚介類を食べて、別れました。

 

 

ビリゲさん

日本へ行ったとき、最初に何を食べましたか。さしみですか。

 

 

オヌルさん

いやいや。実は、非常に変なことなのですが、ひとつ固定観念がありました。3年か4年日本に滞在するが、生魚は絶対に口に入れないぞと決め込んで日本に行ったのです。

こんな風に考えていました。これまでの旅行での経験もありました。

東京のあちこちで世界の料理を見つけることができます。たとえば、特にトルコ料理に近いイタリア料理、フランス料理、スペイン料理などですね。困ることはないだろうと思いました。

 

日本に初めて着いたとき、今これを言うのは恥ずかしいし、食べたことを後悔しているのですが、ピザを食べてしまったのです。

大きな汚点として思い出に残っています。

日本に行ってもピザを食べるのでしょうか。実際にはピザも食べます。いろいろな素晴らしいイタリアレストランがありますから。それは全くの別問題です。

 

でも、日本に行ってちょうど1か月経った頃でしょうか、長年日本に住んでいる「ガイジン」の友人が「お前を寿司に慣れさせなければならない」と言って、私の腕をつかんで強制的に銀座の寿司屋、それも「回転」寿司屋に連れて行ったのです。

そこでゆっくり寿司に慣れて行きました。食べたら気に入りました。好きなネタも好きになれないネタもありました。

その後で妻と1歳半の娘にも試させました。娘にとっては「巻き寿司」が食べやすくて口にも合いました。

寿司はどこでも売っていますね。一番手軽なのはコンビニです。コンビニに行くと、非常においしくて安い寿司を手に入れることができます。

コンビニで買ってうちに持って帰ると、特に娘は大喜びで、1歳半なのに寿司をどんどん口にほおばりました。

娘は「生姜」の漬物も大好きでした。「漬物、漬物」と言って手づかみで食べていましたね。かなりきつい味がすると思うのですが。

いつの間にか、家族全員、寿司が好きになっていました。すっかり「寿司ファミリー」になってしまいました。

 

 

 

 

エブルさん

日本にいた3年半の間、恋しくなったトルコ料理はありましたか。そもそも家族と一緒に行ったので、多分おうちでトルコ料理を幾分食べることができたと思いますが、オヌルさんか、ご家族か「トルコに帰ったらこれが食べたい!」と思っていたものはありましたか。それから、「日本料理には似ているものは全然ない」と思った食べ物や野菜や果物はありましたか。

 

 

オヌルさん

実は、ラッキーだったのか、あまりありませんでした。

例えば、「トルコ料理」と言うと、人々の頭に最初に来るのは「ケバブ(肉料理)」ですね。

 

 

エブルさん

私たちは、毎日ケバブを食べています。

 

 

オヌルさん

まるで毎日ケバブを食べているかのようです。でも、私たちはそれほどケバブ好きな家族ではありませんでした。そもそも、家でも毎日野菜料理を作っていました。ブルグル(挽き割り小麦)とかサラダとかジャジュック(きゅうりとヨーグルトの冷製スープ風サラダ)とかと一緒に食べていたでしょうか。

ですから、あまり問題はありませんでした。

 

考えられているのとは逆に、日本も野菜やきのこ類や果物の観点から非常に豊かです。でも恐らく私たちのようには調理しないのでしょうね。

材料を見つけるのもそれほど大変ではありませんでした。ただ、ちょっと高くついたかもしれません・・・。

皆さんもご覧になったことがあったらご存知のことでしょう。例えば、オクラを買いに八百屋に行ったとしましょう。オクラは1本1本売られているという感じです。5本のオクラを小さいプラスチックのパックに入れて売っているんですよ。

妻はある日オクラが食べたくなって、家の近くにある八百屋4軒を回って、オクラというオクラを全部ごっそり買ってきてしまったことがあるんです。鍋いっぱいのオクラ料理を作りたいと言って。

お店の人も「こんなたくさんのオクラをどうするのか」と驚いたそうです。なぜなら日本料理を作るときは、料理の上に1本の茹でたオクラを・・・

 

 

エブルさん

飾りとして・・・

 

 

オヌルさん

そうですね、ほとんど飾りとしてですね。ですから当然のことながら、我々のように鍋に1キロのオクラを詰め込んで料理を作るという習慣がありません。

でも、そのことで頭がいっぱいになってしまったら、こんな風に見つけ出して、作ってしまうことでしょう。

それで、私はスジュク(スパイス入りのかためのソーセージ)が食べたくて仕方がなかったです。一番懐かしい食べものはスジュクでした。それ以外は特にありませんでした。

 

 

エブルさん

料理の量に関して、困ったことはありましたか。日本の料理の量はトルコよりちょっと少ないので・・・。

 

 

オヌルさん

そうですね。少ないですが、ありがたいことに、私たちは食欲旺盛ではありません。私はたくさん食べないし、妻も元々40キロでした。娘は当時1歳6か月でした。

 

時々びっくりすることもありました。

イタリア料理のレストランに行ったときのことです。「ニョッキ」というおいしいパスタの種類があるそうですが、メニューを見ると値段も高い。でも、「ま、いいか」と言って、「今回はお金をはたいて、食べよう」とチャレンジしてみたのです。そしたら、目の前に出された皿には、8つか9つのニヨッキ。「これは前菜なのか? つまみでも食べるのだろうか? これがメイン料理なのか?」と思いましたね。

 

こういうことは時々ありますが、和食の店に行ったときは、量の問題はあまりないです。

こういう風にご説明しましょうか。居酒屋スタイルの店に行くと、量は少ないですが、安くてたくさんの種類の料理を注文することができます。

実を言うと、これは私がトルコで困っていることでもあるのです。量が非常に多いので、メニューを見て5つか6つの料理を「食べたい」と思っても、ひとつしか注文できません。なぜなら、量も多くて、値段も高いからです。

ですから、私たちは日本の居酒屋スタイルの店が大好きでした。

料理はどれも小さくて、安いです。手頃な値段で15種類ぐらい味わって、満腹になって店を後にすることができます。

 

 

*** 完 ***

 

 

 


 

2020年8月4日 火曜日

 

文責: 浅野涼子

 

 

 

《お知らせとお詫び》

 

・この座談会の日本語文は、インタビュアーのエブル・オクヤルさん、ビリゲ・ボスタンさん、メルべ・アクスさんが訳したものを推敲しました。

 

・トルコでは人名は「名前・名字」(「名前」が2つある場合は、「名前・名前・名字」)の順に表記されます。会話など、コミュニーケーションを取る際は、「名字」ではなくて「名前」を呼び合うのが一般的です。そのことから、このシリーズの座談会の会話の部分の発言者は「名前」を記載しました。

 

・実は、この座談会は2015年12月27日に行われましたが、諸事情あり、発表が非常に遅れてしまいました。オヌル・アタオールさん、エブル・オクヤルさん、ビリゲ・ボスタンさん、メルべ・アクスさんをはじめ、関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。

 

(浅野涼子)

 

 



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