リビアの分かれ道

政治経済社会研究財団(SETA)安全保障研究責任者・作家ムラト・イェシルタシュ准教授著

1447781
リビアの分かれ道

 リビア国民合意政府が立て続けに軍事的成功を収め、全当事者の位置が再形成されているのが見受けられます。もはや政府の安全は議論の的ではなくなり、政府の現状にとっての脅威はなくなりました。これらの成功の大部分をトルコの支援により収めた国民合意政府は、その正統性を強化して戦場で有利になろうとしている一方で、これも同じ支援によりリビアという国の再構築に向けた準備をしています。

 ハフタル軍は、攻勢から守勢に移り、戦場でこれ以上の損失を被らないことを基本の目的に据えています。一方で、ハフタル支持者は勝者側となることを期待していましたが、その期待も今や変化しており、完全な敗者とならないために損失を最小限に抑えようとしています。そのために、国民合意政府の進軍を止めるべく密な活動を始めています。これまでこうしたプロセスにあまり介入してこなかったアメリカは、国民合意政府にとって有利な形でより積極的な姿勢を取り始めています。

 リビアの最新情勢における現状と国土の管理は最終的ではなく、一時的なものです。リビア情勢がどのような進捗をたどるかは、当事者が黙示的・明示的に宣言しているレッドラインと、このラインがどのように超えられるかにかかわっています。国民合意政府とその支持者の最大の主体であるトルコにとってのレッドラインは、シルテとジュフラを含むものですが、それに限らない形で明白なものです。クーデターを企てる民兵組織や傭兵を、その支配している土地から追い出すこと、そしてリビア全土で国家の権威を築きつつ政治的・経済的な安定をもたらすことです。この目的が遂行される中、外交的・政治的な交渉はどの段階でも阻害されていませんが、必要とあれば軍事的手段を講じることも躊躇われていません。

 戦場で敗北した後、ハフタル将軍には個人的にレッドラインを定める余裕は残っていません。ハフタル将軍の代わりに、その支持者がレッドラインを直接的または間接的に決めています。例えば、ロシアは、リビアで正式に軍事展開していないと主張しているとはいえ、ワグナー社を通じて築いた繋がりのほか、国民合意政府がシルテとジュフラを管理するのを妨害げるために最近ハフタル軍に戦闘機を移送しています。

 フランスは、ハフタル軍に長年行ってきた投資の見返りを得られないことがわかると、最低でもその一部を得るために行動に出ており、一方で停戦を再び呼びかけていながら一方でハフタル軍の後退に最も影響を与えているトルコを非難しています。その目的は、トルコをリビアのプロセスから孤立させることです。フランスは、このような姿勢を取りつつ、確実に、リビアのほかにも東地中海での勢力争いで失った地政学的な利益を守ろうともしています。

 アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアは、このプロセスに対し消極的な立場を保ちつつ、それ以前にエジプトとアラブ連盟を通じてリビアにおける損失を最小限に抑え、バランスを取ろうとしています。この点で、エジプトは、アラブ首長国連邦とサウジアラビアとの経済的・政治的依存の影響もあって、最新の進捗に対し直接的な姿勢を取っていると言えます。

 国民合意政府軍がリビア西部全体を管理下に置いた後、シルテとジュフラを奪還すべく「勝利の道作戦」を開始した6月6日に行動を起こしたエジプトのシーシー政権は、同じ日にハフタル将軍そしてアグイラ・サーレハ氏とともにカイロに集まり、停戦を呼びかけて政治的プロセスを開始するよう提言しました。「カイロ宣言」というこの提言は、ハフタル支持者全員から熱烈な支持を受けました。国民合意政府軍がシルテとジュフラを解放することなくして停戦はあり得ないと発表し、それらの地域で作戦準備を続けたことを受けて次の手を打ったシーシー政権は、6月20日にシルテとジュフラを「レッドライン」に指定し、この地域の管理者が変わればリビアに軍事介入する可能性があると仄めかしました。

 こうした中で、リビアと地域における勢力バランスが再形成されることは避けて通れないでしょう。今後、リビアの運命を定める進捗が起きる可能性があります。リビアにおける進捗は、無論、地域の進捗も形成するでしょう。



注目ニュース