【トルコ初】 聴覚障害手話通訳誕生へ

トルコで初めて、聴覚障害を持つ手話通訳が誕生する。

【トルコ初】 聴覚障害手話通訳誕生へ

 

 

 

シナン・ビルギチさん(23)は、トルコで初めて開設されたトルコ手話・ろう者学専攻トルコ手話通訳コース修士課程に在籍するトルコ初の聴覚障害を持つ学生である。

 

トルコ手話・ろう者学専攻は、高等教育委員会の「障害を越えた教育」プロジェクトにより、アンカラ大学大学院社会科学研究科に開設されることが2018年6月に決まり、2018-2019教育年度春学期(授業期間は2019年2月から5月まで)から学生を受け入れることができることになった。

アンカラ大学大学院社会科学研究科に開設されたトルコ初のトルコ手話・ろう者学専攻には、トルコ手話通訳コース修士課程(論文ありと論文なし)とトルコ手話コース博士課程がある。

 

ビルギチさんは、2018年2月に初めて開講されたトルコ初のトルコ手話・ろう者学専攻トルコ手話通訳コース修士課程に入学したトルコ初の学生であり、トルコ初の聴覚障害を持つ学生である。

 

 

卒業まであとわずかとなったビルギチさんは、卒業後、トルコで育成された初の聴覚障害を持つ手話通訳となる。

 

トルコ手話とイギリス手話の間の通訳ができるビルギチさんは、修士課程に通いながら通訳の技を飛躍的に上達させた。ビルギチさんは補聴器を使っているが、唇の動きを読み取る読話能力が極めて高いため、口で話す会話も手話に訳すことができる。

 

ビルギチさんが通っているトルコ手話・ろう者学専攻では、聴覚障害を持つ学生にトルコ語と会話の教育も行っており、学生は会話能力をアップさせることができる。

 

 

 

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トルコのアナドル通信社が行ったインタビューによると、ビルギチさんは4歳半のときに事故で聴覚を完全に失った。

 

修士課程に入学するまでは、トルコ北部の黒海沿岸にあるサムスン県に暮らしていたというビルギチさんは、「自分も含め、周りの人が誰も手話を知らなかったので、義務教育のときは本当に大変だった」と語る。

 

ビルギチさんは、高校はろう学校に進学した。高校時代にレスリングに励んだビルギチさんは、オンドクズ・マユス大学体育・スポーツ教育学科に合格した。

ビルギチさんは、「教師になりたいと思ってとても頑張ったが、ある日『自分は耳が聞こえないんだ』ということに気づいた。自分に合う教育学科もなかった」と、大学時代を振り返る。

 

大学を卒業してから1年後、アンカラ大学大学院にトルコ手話・ろう者学専攻の修士課程ができたと聞いたビルギチさんは、他の仕事をいったんやめて、修士課程に入ることを決断した。

 

10年前だったら修士課程に通おうなんて発想は思いつきもしなかっただろうと語るビルギチさんは、「2020年に卒業するが、とても格別な気持ち」だと言う。

 

聴覚障害を持つ子どもたちの中には秘められた才能が隠されており、手話と会話の教育は、聴覚障害教育の発展に重要な意味を持つと語るビルギチさんは、「トルコには聴覚障害を持つ教師が非常に少ない。『いない』と言っても過言ではない。学士課程や修士課程の教育で聴覚障害を持つ教師を育てることができる」と訴える。

 

アナドル通信社の記者に聴覚障害を持つ若者たちへのメッセージを求められたビルギチさんは、「夢があったら、それを追いかけろ。いつか必ず実現する」とアドバイスした。

 

 

 

 

 

 

「聴覚障害を持つ手話通訳なんか駄目」という偏見を崩す

 

アンカラ大学大学院社会科学研究科トルコ手話・ろう者学専攻長のギュルスン・レイラ・ウズン教授は、アナドル通信社の取材に対し、トルコ手話・ろう者学専攻ではトルコ手話と世界共通の手話について学術的研究を行っていると説明した。

 

ウズン教授によると、現在、論文なしの修士課程で学生8人が学んでいる。

聴覚障害を持つ学生もそうでない学生もいるため、授業はトルコ手話とトルコ語の音声の両方で行われている。

 

「聴覚障害を持つ手話通訳はトルコ手話からイギリス手話に訳すことができるが、これは最も難しいことだ」と指摘するウズン教授は、「目標は、聴覚障害を持つ人とそうでない人とをひとつに結ぶこと。そして、『トルコでも聴覚障害を持つ手話通訳を育てることができる』ということを証明すること。『聴覚障害を持つ手話通訳なんか駄目』という偏見を崩す。手話は聴覚障害を持つ人の母語なのだから」と語った。

 

 

 

 

トルコ初「トルコ手話能力試験」実施

 

今年(2019年)はトルコ手話界にとって、トルコ初となる「トルコ手話能力試験」が実施された記念すべき一年となった。

 

トルコ初の「トルコ手話能力試験」はアンカラ大学付属トメル(トルコ語外国語実践研究センター)の主催により、7月6日と7日の2日間実施された。受験可能な人数の上限は200人だった。

出願状況や結果の分析に関するデータは公表されていない。

 

 

 

2019年12月16日 月曜日

文責: 浅野涼子 (ryoko.asano@trt.net.tr)

 

 

 

 



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