「協議事項分析」 第40回

ソチ合意後のイドリブにおけるチャンスと困難

「協議事項分析」 第40回

政治経済社会研究財団(SETA)の研究者・作家、ジャン・アジュン氏著

 

最近議題の中心となっているイドリブ問題をロシアのソチで開催された首脳会議で確立された合意の末に解決しようとする取り組みは、重要なステップと見なされています。住民350万人が暮らすイドリブをアサド軍の攻撃から守り、保護することは非常に重要でした。トルコの努力と断固とした姿勢の結果、全世界を不安にさせたイドリブに対する軍事作戦の可能性が阻止されたことになりました。

トルコとロシアの間で交わされた合意に沿って、イドリブの前線ライン上に奥行き15-20キロメートルの非武装地帯の設立が決定されました。これにより、反アサド派およびアサド軍から重火器が排除され、テロ組織がその地域から撤退させられます。また、戦略的に重要なラタキアとダマスカスをアレッポと結ぶM4自動車道とM5自動車道が、再び住民が使用できるようにされます。トルコとロシアがソチで重要な合意に調印したとしても、トルコとロシアが合意を前線で適用するには、目の前にいくつかの障害が立ちはだかる可能性があります。

ロシアが担当する地域にとって最大の問題は、イランが支援するシーア派民兵です。実際、イランがソチでの首脳会議に出席していないことは、ソチ合意の適用に関してイランが障害の原因となる可能性があります。イランとアサド軍がどれほど公式にソチ合意を支持すると表明したとしても、イランもアサド軍もイドリブに対してマキシマリストのアプローチを取っていることが知られています。ロシアが合意を前線で適用するためには、イランが支援するシーア派民兵の説得に成功する必要があります。

イドリブで、ソチ合意後にアサド軍地域から反アサド派が支配する地域に対して時折嫌がらせの発砲があったり、アサド軍がイドリブ前線ラインに集結させた軍隊を撤退させないことは、ロシアが多かれ少なかれ困難を強いられていることを示す最初のデータとして明示されています。

トルコの観点からは、ソチ合意を前線で適用する際に目の前に立ちはだかる障害は、地域の関係者がトルコと協調して行動するかどうかということです。イドリブ地域にいる最大の軍事勢力であり、トルコからも支援を受けている国民解放戦線は声明を公表し、ソチ合意に対してトルコと共に行動する用意があるものの、ロシア、イラン、アサド軍を信用していないと述べています。

トルコにとってソチ合意の適用の前に現れると予想される障害は、地域の過激派組織です。実は、イドリブ地域にいる過激派組織は大きく2つに分類されます。1つ目はハヤート・タハリール・アル・シャームが単独で構成しており、2つ目には大小さまざまな過激派グループがいます。ハヤート・タハリール・アル・シャームはイドリブ地域で地域住民の人気を得るために採っている政策を継続するものと見られています。同時にハヤート・タハリール・アル・シャームは、自分たちのイデオロギー的含意をもって穏健派反アサド派とトルコの間で均衡政策を追求しようとしています。実際、ハヤート・タハリール・アル・シャームがソチ合意に関する自分たちの決定を明らかにする声明を公表していないことは重要です。ソチ合意が前線で適用されるために、ハヤート・タハリール・アル・シャームが非武装地帯から撤退するよう説得される可能性があります。

しかし、ホラス・アル・ディンのようにより過激で直接アルカイダ本部とつながりがある組織は、ソチ合意を拒否することを明白に宣言しました。これに鑑みて、トルコは自分たちに協力するグループと共に、このような過激派組織に対して必要な措置を講じることを余儀なくされる可能性があります。

シリアの大部分をDEASH(ISIL)や分離主義テロ組織PKKのシリアにおける派生組織YPGのようなテロ集団から一掃したトルコが、ソチ合意に沿って、かつ自国の利益に鑑みてイドリブ地域も中長期的にテロ集団から一掃すると予測することができます。トルコのテロ対策により、イドリブはシリア人が平穏に暮らすための新たな獲得エリアになる可能性があります。


キーワード: 協議事項分析

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