「トルコ外交政策へのまなざし」 第39回

トルコ・ドイツ関係における改善の兆し

「トルコ外交政策へのまなざし」 第39回

アタチュルク大学国際関係学部ジェミル・ドアチ・イペク博士著

 

トルコとドイツの関係がここ数年で緊張を高めてきたとはいえ、ここ最近その関係が改善の兆しを見せています。私たちも今回、最新状況とともにトルコ・ドイツ関係を分析します。

トルコから見たドイツとの関係はここ数年で、過去にまったくなかったほど悪化しました。過去から現在まで両国の間で起こった上級関係者同士の緊張は、長期的で系統的な枠内にここ3年間ほど収まったことはありません。

ドイツ誌「デア・シュピーゲル」のドイツ連邦情報機関BNDが2009年以降トルコの上級関係者の電話会談を盗聴していたことがニュースとして伝えられてからそもそも両国関係は緊張していました。それに続いて2016年にドイツのコメディアンのヤン・ボーマーマンがトルコのレジェプ・ターイプ・エルドアン大統領について侮辱に満ちた詩を書いたことに対し、ドイツ当局が捜査を行うどころか表現の自由のもとにコメディアンを弁護したことが、明確な危機の最初の印となりました。その後数か月間でドイツ連邦議会でいわゆるアルメニア人大虐殺を事実とする法案が承認されたことを受けて、外交関係に深刻な亀裂が入りました。トルコ政府が見返りとして同じ週にドイツの国防大臣によるトルコのインジルリク基地訪問要請を拒否したことが、国際メディアで反響を呼びました。ドイツ政府が連邦議会の決定は拘束力を持たないと言っているとはいえ、危機は急速に悪化していきました。

ドイツは、トルコのテロ組織PKKとフェトフッラー派テロ組織との戦いをめぐり、理解しがたい形で、トルコ政府の意に反するあらん限りのすべての歩みを踏み出しました。これらのテロ組織のメンバーを自国に迎え、身柄返還や審問の要請を拒否しました。トルコのこれらのテロ組織との戦いにおいて後ろ向きな姿勢を取っていることが知られているドイツ政府が、トルコの意に反する動きをもはや隠そうとしなかったことは注意を引きました。

この時期にドイツ政府は、トルコで起こった2016年7月15日のクーデター企て未遂事件への非難をあまりしようとしませんでした。クーデター企てで動いた者の身柄を理由もなく返還せず、自国で匿いました。このことは、ドイツ政府が、公正発展党(AKP)の政権に対する姿勢が何であれ、悪意ある戦いに変わったという印象を与えました。なぜならクーデター企てのすぐ後にドイツに避難し、ドイツでの居住許可を与えられたトルコの外交や軍の元関係者が900人近くいたにもかかわらず、身柄返還されなかったことが記録されているからです。トルコの重大な安全保障問題であるテロリストの身柄返還に対し、ドイツの司法は政治的な振る舞いをしつつ、トルコが反体制派を弾圧により抹消しようとしており、そのためにインターポール(国際刑事警察機構)を悪用し続けていると主張しています。

2016年7月に今度はエルドアン大統領のドイツ在住のトルコ人との電話会議を通じて選挙集会を行う要請を拒否したことが、両国関係における問題を改めて明らかにしました。

ドイツ当局は、トルコのテロとの戦いで人権が制限されており、民主的な原理が十分に重視されていないと主張しています。それに対し、ドイツに暮らすトルコ人への差別攻撃に対しドイツ国家が措置を講じず、警察や司法が捜査を行っていないことは、ドイツメディアでも世界のメディアでも十分に「反民主的」とはみなされないのです。

特にトルコ国民の殺害に向けて開始され、ここ最近結論が出されたNSU(国家社会主義地下組織)の差別攻撃に対する裁判は、最初から最後までおかしな決定が下されました。何十人ものトルコ人が殺害され、この虐殺がドイツ国家内部のナチス支持者のグループによって支援されていたことがほぼ確実だとわかった中で、数人の下級関係者以外には誰も刑罰を下されず、組織構造は明らかにされませんでした。このことにより、容疑者らをドイツ政府が保護しているとの主張が高まっています。

これらすべての緊張した政治を凍結させた出来事は、アメリカとの間で、両国それぞれが経験した問題でした。アメリカのトランプ大統領が、ドイツとトルコに向けて経済・安全保障の土台を揺るがすアプローチをしたことで、トルコ政府とドイツ政府は接近しました。特にトルコで始まった為替をめぐる経済の動揺によって銀行業がヨーロッパを通じて連鎖的に影響する可能性により、ドイツがトルコ側に立つこととなりました。これらの出来事が、両方とも北大西洋条約機構(NATO)の加盟国である二国が、アメリカによってかつての同盟関係が問いただされるこの時期により近い土台に立つことが必要となっています。

その最新の例は、ドイツのオーラフ・ショルツ財務大臣がフランスの財務大臣と今週トルコを訪問した際に見られました。会談で、この国々の貿易関係を発展させ、為替が動揺している中、ドイツがトルコ経済の安定を守ろうとしている姿勢が繰り返し伝えられました。それと似た事例は、前週にトルコのイブラヒム・カルン大統領府報道官が先導したドイツ・フランス・ロシアの代表者が出席したイドリブの未来に関するイスタンブールの会議で見られました。シリアのイドリブに行われる可能性のある攻撃は、移民の流入の可能性によりドイツに懸念をもたらす主要の外交問題の1つです。

トルコとその昔からの同盟国であるドイツとの間には、由緒ある歴史と、政治・経済・軍事・人道面での多面的な関係があります。両国関係は多くの近隣諸国よりももっと緊密です。相互の上級訪問のほか、テクニカルレベルでの会談が伝統的に一定期間ごとに行われています。両国関係がこれほど緊密で多面的なことで、諸々のチャンスも試練もしばしばともにもたらされます。問題を乗り越え、関係を正常化するために、対話の道を開いておくことが重要とされるべきです。ここ最近共通のリスクの認識が両国関係に追い風になっていることで、トルコがEU加盟交渉に再び積極的なメッセージを向けることとなりました。外交政策のリスクが高まっていることで、ドイツ政府はトルコに向けたより注意深い政策を行うべきでもあります。



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