「トルコ外交政策へのまなざし」 第26回

1年目を迎えたカタール危機とトルコ・カタール関係

「トルコ外交政策へのまなざし」 第26回

アタテュルク大学国際関係学部ジェミル・ドアチ・イペク博士著

 

2017年5月23日から5月24日にかけての夜、カタールの通信社がハッキングされたのと同時に始まり、6月5日に多くのアラブ諸国が外交関係を絶ち、海、陸、空を封鎖してカタール政府を孤立させ、国際化したカタール危機から1年が過ぎました。私たちも今回、カタール危機とトルコ・カタール関係を分析します。

1年前に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトも含む一部のアラブ諸国が、様々な罪を着せてカタールとの国交を絶ちました。この状況は、湾岸諸国でここ最近の最大の外交危機を招きました。国交の完全な断絶は、アメリカのトランプ政権を通じた「カタールとの関係を吟味するように」との圧力が増した時期に起こりました。サウジアラビアと、同国と行動を共にした諸国は、テロリズムを支援したとしてカタールを非難しました。しかし、この国々はこの主張が正しいということを確証できませんでした。

カタールは、ペルシャ湾の小国ですが、地域の政治と経済に大きな影響を与えている国です。カタールには世界第三の天然ガス備蓄があります。重要な大学、シンクタンク、アルジャジーラのような国際大手メディアを抱えています。カタールの領土に展開する外国の軍隊や基地もあります。トルコとの関係は非常に良好です。カタールが地域でトルコとエネルギーをめぐる協力活動を行っていること、トルコとの軍事関係、さらにはトルコのカタールにおける軍事基地の存在が、多くの湾岸諸国を不安にしていることがわかっています。

カタールは地域における民主化運動を支援したことで、アラブ世論においてとても良いイメージを持っています。成功したソフトパワーにより、地域的にも国際的にも影響力を持つ国です。特に英語とアラビア語で放送するアルジャジーラを抱えるカタールは、地域的にも国際的にも世論を築いています。

カタールは、湾岸諸国の他の国の政府に比べて、よりリベラルな政策を行うことで注目されています。アラブの春において多くの反対派や変革の主体を支援したことは、湾岸諸国の君主国のカタールへの反発の基本的な原因となりました。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、アメリカがカタールを標的にしているさらに重要な理由は、カタール政府の政治的な選択やその外交政策です。実際に、トルコとカタールがシリアで反アサドの穏健反体制派を支持していることが知られています。ジュネーブ・プロセスとアスタナ・プロセスで、反体制派を協議に参加するよう説得したのはトルコとカタールでした。

カタールとトルコは経済分野で大きな協力活動を行っています。トルコにおけるカタールの投資額はおよそ200億ドル(約2兆2000万円)です。カタール危機が始まったとき、トルコの前には2つの選択肢がありました。中立を保つか、積極的に動くかです。トルコは2つ目を選び、カタールを支持しました。トルコの外交では密な会談がカタールのために行われました。トルコは、カタールの食糧供給の問題を解決するために封鎖を破って食糧を送りました。そして最も重要なのは、以前カタールとの間で結ばれた条約を議会で通過させ、カタールにトルコの軍事基地を開発すると決めたことでした。

トルコがその同盟国カタールを支援する際に、バランスの取れた和解的な外交を行ったことは、的を得た政策です。カタールにおけるトルコ基地が「湾岸諸国全体の安全と安定」に向けたものだとエルドアン大統領が強調したことは重要です。さらに、同時期にサルマン国王に類似の基地をサウジアラビアに築くことを提案したと発表したことも、トルコの建設的なアプローチのもう1つの例です。最初の段階でカタールを支持する平和的なメッセージを伝え、それをあきらめないトルコは、自らが地域のスマートパワーであることを証明しました。

カタールは国際金融分野でも重要な主体です。国際投資により、ここ数年でクウェートとアラブ首長国連邦などの湾岸地域の投資諸国を追い抜きました。世界第三の天然ガス、第十三の石油備蓄を持つカタールは、大きな経済発展を見せています。この発展を国内のモダン化活動により支援するカタールは、設立したカタール財団とモダン化・国際化がもたらしたフォームを、イスラム文化とカタール文化と混ぜ合わせて変化させています。カタールは、宗教としてはサラフィー主義の最も穏健な路線を辿っています。カタールは、サラフィー主義の大半に見られる過度に強固で排外的なアプローチとは距離を置いています。この状況も、カタールをスーフィー・イスラム伝統の相続人であるトルコに近づける別の要素です。

1913年にトルコ人はイギリスと結んだ条約により、カタールからの撤退を受け入れました。しかしカタールからの撤退は1915年になってから行われました。現在、トルコ人はカタールと多くの分野で協力活動を行い、元の関係を再構築しています。今日カタールとトルコは、中東の安定のためのバランス政策を成功裏に行っています。両国とも、協力活動を行って独立した積極的な外交政策を行っています。中東のこの二大国は、寛容、慈善、仲介、起業、投資などを行うことを特徴として、地域と世界で影響力を持っています。この二大国は、中東地域で新たな秩序を構築する主体であらざるを得ません。この点で、トルコとカタールは共通の価値や共通の原理により意見を一致させています。



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