「世界の視点」 第3回

クドゥス(エルサレム)が陥落したらどうなるか?

「世界の視点」 第3回

アンカラ・ユルドゥルム・ベヤジット大学政治学部クドレト・ビュルビュル学長著

 

(一部の国や地域ではエルサレムと呼ばれている)クドゥスは、ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ人にとっての聖なる都市です。クドゥスはムスリムが最初にその方向を向いて礼拝を行った場所です。預言者ムハンマドが天に昇った都市です。詩人セザイ・カラコチの言葉を借りれば、「天で作られ、地に下ろされた町」です。

1516年にヤヴズ・スルタン・セリムが征服した後1917年まで401年にわたりオスマンの平和(パックス・オスマナ)を享受して、様々な宗教のどの人々も平和と安寧の中で暮らしてきた都市です。

長い間続いた平和の時代に、今日の認識とは逆に、メッカとメディナとともに、クドゥスは中東に、中東から世界に、平安を広めた場所の1つとなりました。今日はといえば、イスラエルが血の海に変え、他の進展とともに、中東の一部の人々から「泥沼」とみなされています。

アメリカが、自国の内政問題の延長線上で、クドゥスを一方的にイスラエルの首都と認定したことに対し、全世界が団結しました。国連で、まれに見る形で、すべての国がアメリカのこの決議に対し、誇り高い姿勢を見せました。国連安全保障理事会で、14対1の投票結果により、アメリカは孤立しました。国連総会で、アメリカ以外にはわずか8カ国のみがこの脅迫に屈しました。イスラム世界、欧州連合(EU)、アフリカ、南米、中東諸国が、めずらしくともに行動を起こしました。

アメリカとイスラエルでも起こったように、ほぼすべての国々で、人々がこの決議に抗議しました。人類がまるで常識のもとに一致団結したかのようです。

ここで、イスラム協力機構の議長国として、トルコが率先して取った行動を指摘する必要があります。レジェプ・ターイプ・エルドアン大統領がEU諸国の指導者、プーチン大統領、ローマ法王その他の関係者と会談したことは、共通の姿勢を見せるために非常に重要なものでした。

クドゥスは、内部に多くの問題を抱えるイスラム諸国をも、再び一致団結させました。EU諸国とイスラム諸国も再び共通の目標のもとに集結しました。

アメリカのクドゥスをめぐる決議により、パレスチナ問題への世界的な認識が形成されるよう願います。この決議に対する世界的な合意は、パレスチナで行われている民族浄化を浮き彫りにし、地域で人々の権利をもとにした取り組みが活性化するきっかけになります。

アメリカのクドゥスをめぐる決議は、一見悪いことのように見えるものからも良いことが生まれることの最良の見本です。

もし抗議が行われなかったとしたら、トルコの故エルバカン首相が常に指摘していたように、イスラエルは、地域諸国の領土も含む、チグリス川とユーフラテス川まで延びるイスラエルの「約束の地」の理想に向けてさらに驕り高ぶっていたでしょう。今日この状況とともに地域と人類のために作り出された脅威を考えると、「大イスラエル帝国」が作り出す脅威がもっと鮮明になってきます。

「約束の地」の理想に血道を上げ、自分たちを「選ばれた民族」だと考えるシオニスト・ユダヤ人が作り出す脅威について、おそらくこのようには考えない、差別主義者でなくファシストでもないユダヤ人たちは気づいているでしょう。彼らはヒトラーがドイツ人を「優秀な民族」であると標榜してナチズムのイデオロギーが人類にとってどんなに大きな災厄になったかを覚えているでしょう。アメリカのクドゥスをめぐる決議に対する抗議がなかったとしたら、類似の「選ばれた民族」のイデオロギーが、さらにずっと驕り高ぶっていたことでしょう。

クドゥスをめぐる決議に対し、EUとイスラム諸国が共同で反発を表明したことで、最近次第に緊張化しているイスラム諸国と欧米諸国の関係が、絶対的な対立の上に築かれる必要がないことが、今一度見て取れました。

アメリカの決議に対し、抗議が行われなかったとしたら、正当性ではなく力が支配する世界の認識がさらにずっと強まっていたでしょう。抑圧された地域の不正に対する抵抗の力が大きな傷を負っていたでしょう。クドゥスについて世界的な努力がなされなかったとしたら、絶望が受け入れられ、それがさらにずっと拡大し、未来への希望がさらにずっと暗いものになっていたでしょう。

この決議に対し人類が沈黙していたら、人類は、イスラエル軍に対し果敢に抵抗するパレスチナの誇り高い少女アヘド・エト・テミミさんにどう顔向けできたというのでしょう。

ガザでパレスチナ人の家々の破壊に対し抗議する中、イスラエルのブルドーザーに轢かれた、当時まだ24歳だったアメリカ人平和活動家レイチェル・コリー氏の名前をどう思い出すことができたというのでしょう。

それでは、抗議するだけで十分でしょうか?

もちろん、十分ではありません。なぜならクドゥスが陥落すれば、先に述べた前向きな事柄のすべてが逆になってしまうからです。

クドゥスの陥落を防ぐためには、最大の自由主義者ユダヤ人が抗議する必要があります。でなければ、最初に敗北するのは彼らです。ナチス・ドイツで最初に敗北したのが自由主義者のドイツ人だったようにです。ナチス・ドイツにより、人類は重い代償を払いました。ユダヤ人はナチス・ドイツと同じことを繰り返してはなりません。

見てのとおり、クドゥス問題は、ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ人だけの問題ではありません。クドゥス問題は、人類の問題なのです。


キーワード: 世界の視点

注目ニュース