「アナトリアの伝説」 第42回

今日は、トロイア戦争の最大の英雄で戦争の発端を招いたトロイアの王子・パリスの物語をお伝えします。

「アナトリアの伝説」 第42回

トロイア王プリアモスに1人の息子が生まれました。当時、神官たちは人々に大きな影響を及ぼす存在でした。神殿の最も重要な神官たちは、子どもの将来について相談にやってきたプリアモス王に、「この子どもはトロイアの滅亡を招く」と告げました。プリアモス王は息子への愛情と、国に暮らす何千人もの人々への愛情の板挟みになってしまいました。国の王として、この予言を恐れました。そして、父親として辛い決心をし、赤ん坊を殺すよう1人の男に命じました。男は無垢な赤ん坊に手出しをすることができず、トロイアの近くにあるカズ山で羊飼いをしていた1人の男のそばに赤ん坊を置いていきました。そして王には赤ん坊を殺したと伝えました。

赤ん坊は時とともに羊飼いの息子として成長しました。羊が山から山に移っていくのを見ることが幸せでした。

神話によると、このパリス王子が成長したときに、王ぺレウスと海の精霊テティスがカズ山で結婚すると決めました。結婚式にはゼウスを含むオリンポス山のすべての住人や周辺の国の王が招かれました。

悪いことが起きるとして皆が呼びたがらなかった争いの女神エリスは招かれませんでした。結婚式があるのに招かれなかったことを知ったエリスはとても怒りました。そして怒りにかられ、「最も美しい者へ」と書かれた黄金のリンゴを用意し、結婚式にやって来て、誰とも口を聞かずにその黄金のリンゴを置いて去っていきました。

黄金のリンゴに書かれた一文を読んだ絶世の美女の女神たちはお互いに言い争いました。皆、自分が最も美しいと主張しました。しまいには、3人の最も美しい女神のうちゼウスの妻ヘラ、戦争の女神アテナ、美の女神アフロディテが、何日間も言い争う羽目になりました。事件は大きくなり、世界を破滅に導く争いになってしまう寸前まで来ました。

ゼウスはこの状況に割って入り、カズ山で羊飼いの息子として知られる、元はトロイアの王子であるパリスが、最も美しい者が誰かを決めると言い渡しました。3女神は、パリス王子のもとへやって来ました。3人ともパリス王子に認められるために、いろいろな約束をしました。

若い王子は、アフロディテが約束した、その美しさで知られるスパルタ王妃ヘレナの愛を得ることを選びました。こうして史上初の美人コンテストに勝ったのは、アフロディテとなりました。パリス王子は、父親であるトロイア王のもとへ戻りました。王は神官たちが間違っており、ゼウスが重要な任務を負わせた息子がトロイアの栄光をさらに大きくすると考えました。

その後、パリス王子は再びトロイア王子として認められました。若いパリス王子は兄である英雄ヘクトールと、スパルタ地方に任務のために赴きました。アフロディテは約束を守り、スパルタ王の妻となっていた絶世の美女ヘレンはパリスに恋をしました。パリス王子とヘレンはともにトロイアに逃げてしまいました。

スパルタ王は妻が誘拐されたことに大いに怒りました。全ギリシャで最強の戦士である兄が、スパルタ王を訪れ、ヘレンを助けるために大きな戦争を行うよう求めました。

大軍を率いてトロイアに迫ったギリシャ王は、10年以上トロイアを包囲したものの、トロイアは陥落しませんでした。そこで、一計を案じて、歴史にトロイアの木馬として残ることになる大きな木馬を造らせました。大きな木馬には20人の兵士が楽に隠れることができました。中に隠れた兵士たちはトロイア軍がこの木馬を町の中に引き入れた後、夜になって行動に出ました。ギリシャ軍の撤退により勝利を疑わなかったトロイア軍は、お祭りに酔いしれていました。町中がお祭りに夢中になって町の防衛が忘れられ、トロイアの木馬に隠れた兵士たちが町の扉を開き、夜の闇に紛れて襲い掛かったギリシャ軍は、たちまちにしてトロイアの町を陥落させてしまいました。

完全に焼かれ、略奪されたトロイアの町は、神官たちの予言通りになってしまいました。パリス王子は本当にトロイアの滅亡を招いてしまったのでした。


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