「アナトリアの伝説」 第40回

今日は、東アナトリアの高原地帯の最も重要な都市、エルズルムの伝説をお伝えします。

「アナトリアの伝説」 第40回

エルズルムはアンカラから東へ向かう時にシワスとエルジンジャンを過ぎてから着く大都市です。東に向かって旅を続ければ、イラン、アゼルバイジャン、アルメニアにたどり着きます。歴史を通じて多くの伝説が語られてきたこの地域から、今日は、「花嫁が来た」という名の伝説をお伝えします。

昔々、おそらく今日から300年前、エルズルムのウルジャ地方に、1人の娘が暮らしていました。娘が住んでいた地域は天然の温泉で有名です。伝説は、この温泉が湖となった場所についてのものです。この湖の近くに住んでいた若い娘はすくすくと成長し、結婚適齢期を迎えました。他の村のとある青年がこの娘を見て恋に落ちました。そして青年は自分の両親に懇願し、「あの娘と結婚させてくれ」と言いました。両親は娘について調べ、娘の家系が由緒ある家系であり、娘が美しく上品だとわかると、娘の家族に知らせ、娘をもらいに行きました。2つの家族はこの結婚を許し、皆に2人の婚約が伝えられました。そして結婚の日が決まりました。

ところが、まさに結婚披露宴が間近になった時、俄かに起こった戦争で、国家が青年を徴兵し、戦争に連れて行ってしまいました。時が経ち、披露宴の準備をしていた若い娘は毎日嫁入り道具を整えるのでした。レース編み、刺繍、礼拝用の調度品、ターバンを、不安に駆られながら整えるのでした。そして、どきどきしながら青年が戦争から戻ってくるのを待ちました。

ある日村に届いた悲しい知らせにより、若い娘の世界は粉々に砕け散ってしまいました。青年は勇敢に戦い、殉死したのです。それからしばらくすると、娘には他の求婚話も持ちかけられるようになりました。娘をもらいに来ようとする人々は後を絶ちませんでした。娘の家族は、とうとう認めたとある青年との結婚を許しました。娘は運命を受け入れ、結婚する日を待ちました。結婚披露宴の準備が整えられ、太鼓やズルナの演奏が大音量で始まりました。青年の家族が娘をもとの家からもらって新しい家に連れて行くために、娘を迎えに来ました。娘は白い馬に乗せられて、旅立ちました。大勢の護衛が、結婚の民謡とともに進んでいきました。

一行は途中、湖のそばで一休みしました。若い娘は馬から降りました。そして、湖の水面に、最初に婚約した青年のシルエットを目にしました。そして娘は青年の姿に向かって歩き始め、湖の中に入ってしまい、見えなくなってしまいました。

花嫁の一行は狼狽えましたが、娘を助けることはできませんでした。そして「今に現れるだろう」と言って娘を待ち始めました。風が水の上を吹き渡ると、「花嫁が来た、花嫁が来た」と言って喜びました。しかし、時が過ぎても、来る者もいなければ去る者もいませんでした。

一行がこの言葉を繰り返したことで、この言葉は湖の名前となりました。その日から、愛のために命を落とした娘の名前がこの湖につけられたのでした。

今は少し小さくなってしまいましたが、この湖はまだあります。若い娘と青年の伝説は、人々の間でずっと語り継がれています。


キーワード: アナトリアの伝説

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