「トルコの窓から見た中東」 第38回

2017年9月25日に北イラク・クルド地域政府は、独立の賛否を問う住民投票を実施します。私たちも今回、この住民投票が道理にかなっているかどうかを国際法の観点から分析します。

「トルコの窓から見た中東」 第38回

6月に、北イラク・クルド地域政府のマスウード・バルザーニ大統領は、独立住民投票の実施日を2017年9月25日にすると公式に宣言しました。それから、キルクーク県議会が、キルクークも参加すると発表しました。しかし、イラク・クルド地域政府は、独立住民投票のために望んだ内外の支援を現時点で完全には受けられていません。イラク・クルディスタン民主党以外の他の大きな政党は、住民投票に支援を行うことに関し、今はまだ公式な発表を行っていません。地域の主要な人口を占めるトルクメン人とアラブ人も、住民投票を快く思っていません。しかし、住民投票を阻止するための何らかの政治力や軍事力は持っていません。アラブ人とトルクメン人が今後勢力を拡大すれば、領土を取り戻すためにあらゆる取り組みをするでしょう。

筆者からすれば、この住民投票は、阻止されることなく行われれば、その結果により、地域で大きな紛争の始まりをもたらすことになるでしょう。1938年のミュンヘン条約の後の出来事に似たことが、今度は中東で、さらにひどい流血沙汰を引き起こすでしょう。

北イラクで行われる住民投票は、地域の一般的な状況、イラク、正当性の観点からして、深刻な窮地となります。まず言っておくべきことは、イラク・クルド地域政府の分離独立の要望は、自己決定の観点から、正当な要望ではありません。今日のイラクの大統領は、イラクのクルド人の大統領です。イラクにはクルド人政権の自治領があります。また、北イラクはおそらく、歴史上最も繁栄した時期を過ごしています。イラクでクルド人と北イラク・クルド地域政府に対する政治的・軍事的圧力は微塵もありません。なので、自己決定と分離独立を正当化するような状況は、ありません。このように気まぐれな自己決定の要望が認められれば、明日イラクや他の国々で、他の分離独立の要望も起こるでしょう。それでも、今日の国際法の最も基本的なルールは、国家の領土保全と独立の保護です。このルールは国際社会の平和と安定の保証として認められています。国際法で軍事力に訴える唯一の例外である合理介入権は、一国の領土保全と独立が危険に陥ったときに考慮されます。なので、住民投票の過程は、法的にも、どの観点でも、深刻な問題を抱えています。北イラクのクルド人の間でも、住民投票に反対し、住民投票を正当とみなさないグループが、少なからずいます。

キルクーク県議会が採った決議も違法です。この決議は、何よりもまず、憲法をはじめ、イラクの法律に反するものです。キルクーク県議会は、トルクメン人とアラブ人が一切参加しないまま、26人のクルド人のうち24人が参加した投票で、21人が賛成票を入れたことで、住民投票に参加する決議を採りました。キルクーク県議会のこの決議は、クルド人の投票だけで行われ、クルド人以外のグループはこの決議に一切賛成していないことから、この決議はイラクの憲法に違反するものです。

今日バルザーニ大統領とその同盟者が支配し、独立を宣言しようとしている領土は、歴史的にはトルクメン人のものであり、トルクメン人の故郷です。この地域が今日「実質的に」バルザーニ大統領に支配されていようとも、この事実は変わりません。この地域の境界線の内側に暮らす人口の大部分はトルクメン人です。長年にわたり計画的な攻撃が続いてきましたが、トルクメン人は、今日のイラクに暮らし続けており、イラクを樹立した民族の1つです。

住民投票による分離独立の決議が容認されれば、トルクメン人や他の民族的・宗教的少数派グループにとっても、自己決定権が取りざたされるようになるでしょう。この決議が容認されれば、1990年より以前の北イラクの人口・民族的構造による、すべてのグループの分離独立を含むあらゆる要望が正当になるでしょう。もしクルド人がイラクから分離する権利を持っているのなら、イラクに暮らすすべての民族的・宗教的少数派グループも、分離独立の権利を持つのです。

こうして、住民投票が行われ、分離独立の決議が採られれば、イラクのトルクメン人も、今後イラクで独立住民投票の実施を考慮する可能性があります。また、トルコ共和国もイラクとの会談により、領土保全を脅かす状況に関し、相互支援と協力協定を締結することも今後の議題となる可能性があります。

アタテュルク大学国際関係学部ジェミル・ドアチ・イペク博士の見解をお伝えしました。



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