「トルコの窓から見た中東」 第31回

イラク北部クルド自治政府は、しばらく話題になっている独立に向けた国民投票を、2017年9月25日に行うと伝えました。

「トルコの窓から見た中東」 第31回

私たちも今回、北イラクで行われる国民投票と地域への影響を分析します。

イラク北部クルド自治政府のマスウード・バルザーニ大統領は、独立に向けた国民投票を2017年9月25日に行うと公式に発表しました。クルド自治政府は、独立国民投票に望んだ内外の支援を今のところ完全に受けることができていません。クルディスタン民主党以外の大きな政党は、国民投票に支援を行うことに関し、今のところ公式な発表は行っていません。地域の大きな人口を占めるトルクメン人やアラブ人は、この国民投票を快く思っていません。

バルザーニ大統領が独立を要求しているのは今に始まったことではありません。9月25日に行われる独立国民投票は、クルド人にとっての新たな政策ではありません。なぜなら独立の要求は1世紀前にまでさかのぼるものだからです。1921年に始まったイギリスの委任統治下のイラクを、クルド人は快く受け入れませんでした。1932年にモッラ・アフメト・バルザーニ主導で独立のために反乱を起こしましたが、不成功に終わりました。アメリカによるイラク占領の後に、この問題は常にクルド人の話すところとなりました。

クルド自治政府はここ2年間、配下の者の給与をきちんと支払うことができていません。経済は破たんした状態です。また、テロ組織DEASH(ISIL)の出現とともに、100万人以上のイラク人が、戦闘地域からクルド自治政府管理下の地域に移住しました。このようなあらゆる後ろ向きな出来事が起こったにもかかわらず、クルド自治政府に希望を与えた他の出来事も起こりました。テロ組織DEASHに対抗して結成された有志連合軍が、ペシュメルガ軍に2年間訓練を施しています。今日クルド自治政府は2年前に比べてより専門的で、より組織化され、より強力に武装された武装勢力を有しています。さらにペシュメルガ軍は、DEASHが出現させられた地域に居住し、そこから離れようとしていません。イラク中央政府とクルド自治政府の間で2005年以降続く論争の的となっている地域の重要な部分は、今日クルド自治政府の実質的な支配下にあります。この地域の中にはモスル北部の潜在的な、豊富な石油地帯とキルクークの石油備蓄を抱える領域もあります。

バルザーニ大統領が国民投票の実施を決定した背後にある基本的な理由の1つはこれです。独立を宣言することで、国民投票後に行われる選挙に出馬しないこと。その後には暫定的な大統領を支援し、2018年にイラクで強力化した民兵政治が、マーリキーまたは類似の政治家を政権の座につけることを条件に、独立を誘発してクルド国家の初代大統領となることです。

地域に昔からおり、多くの人口を占めるイラクのトルクメン人とアラブ人は、クルド自治政府の国民投票実施決定に厳しい反発を示しました。しかし、国民投票を阻止するための何らかの権力や軍事力は持っていません。アラブ人とトルクメン人がこの先強力化すれば、自分たちの土地を取り返すためにあらゆることをするでしょう。

地域の国々を注意して見てみると、一連の出来事より前の年と今では比較的変わりました。カタール危機の後、サウジアラビアはクルド自治政府の独立を支援するための公的活動を行っています。イスラエルは、とっくに知られていた支援をもはや白昼のもとに晒しています。地域の重要な国であるトルコとイランは、国民投票実施を批判しています。

イラクと中東の危機は、バルザーニ大統領にとって大きな機会となっています。DEASHとの戦いの過程は、国際的な領域でバルザーニ大統領への共感を生みました。貧弱なイラク政権が、中東で一度に多くの内戦が起こったために、地域の勢力の注意を異なる領域に向けていることは、おそらくバルザーニ大統領にとって独立のためのより良い機会とはならないと思われます。イラクで非常に深刻な内政問題が起こっているときにこの国民投票の決定がなされたことで、地域の混沌とした情勢はさらに悪化する可能性があります。また、国民投票は、イラク憲法に反する一方的な決断です。国民投票から何が得られようと、地域に安定をもたらすのは不可能なように見えます。反対に、地域で新たな衝突が起こる可能性があります。

クルド自治政府が独立しようとすることで、イラク中央政府とトルコとイランは深刻な挑発を受けることになります。振り返ってみると、4月にトルコのエルドアン大統領は、クルド人のキルクークに関する権利主張を厳しい言葉で批判し、キルクークのクルドの旗を降ろすよう要請していました。エルドアン大統領は、「キルクークはクルド人のものだなどという詭弁には、我々トルコは従わない。キルクークはそこに暮らすトルクメン人、アラブ人、クルド人皆のものだ。なので、「我々クルド人のものだ」などと言ってこのような主張をしないように。その代償は重いものとなる。」と発表していました。以前共闘が行われたにもかかわらず採られた国民投票の決定は、トルコとクルド自治政府の間の良好な関係の冷却の原因となります。結論を言うと、イラクの国土確保と政治的協力の保護は、トルコの対外政策の必須の原理の1つなのです。国民投票がどんな結果になろうと、トルコの支援なくしてクルド自治政府がうまくいくことは不可能なのです。

アタテュルク大学国際関係学部研究員ジェミル・ドアチ・イペク氏の見解をお伝えしました。



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